Episode.30"TOUCH"

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"僕はメジャーリーグに行くことにした”、前回までは、

 

HNSに入校して以来、

大手航空会社のCA2名と交際中のY

カレンとの関係は良好で、ついに自分の親に紹介する日がやってきた。

これはマイナーリーグからメジャーリーグに活躍の場を移したナンパに精を出す物語である。

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偶然、朝起きることが出来た

 

目覚まし時計も何もかけなかったが

 

運が良かった

 

 

カレンを部屋に残して僕は仕事へ出かけた

 

彼女が僕のスーツ姿を見たことは1度もなかった

 

それは僕がスーツがあまり好きじゃないということもある

 

スーツなんか滅多に着ない

 

 

 

 

小さい頃のなりたい夢は

 

なぜか消去法から始まっていた

 

"スーツは着ない、満員電車にも乗りたくない"

 

幸運なことにそれは叶ってしまって、今の僕がある

 

 

意外にも早く仕事が終わり、散策をすることにした

 

カレンが作ってきた、行きたいリストを手に取る

 

今残された時間の中で、

 

1番価値のあるところはどこだ?

 

 

僕らが出した答えは、

 

有名な寺でもなく、

 

旅行客に人気の場所でもなく、

 

水族館だった

 

出来たばかりの当時は相当な人気だったらしい

 

現在は落ち着いていて、普通に魚たちを楽しむことが出来る

 

僕らは、人並みの時間を過ごした

 

もちろん、大抵のことで楽しめたし、ある魚が僕の妹に似てるだとか

 

2人にしかわからないようなことでも十分笑いあえた

 

とりわけ最高だったのはイルカのショーだった

 

イルカ自体に感動したわけじゃない

 

イルカのトレーナーのパフォーマンスにとても感動したのだ

 

あんなに心から笑顔になれる人を見るのも久しい

 

ビジネススマイルか?

 

そうではないだろう、彼ら自身がパフォーマンスを楽しんでいる

 

ショーというものにリスクは付きものだ

 

なぜなら、飼いならすことに完璧など存在しない

 

しかし、そこは毎日の訓練なのか、毎日の対話なのか

 

イルカが命令を聞かなくても、笑顔でやり過ごせる

 

通常ならビジネスに失敗は許されないが、観客もそこまで求めてないだろう

 

あくまで生き物、あくまで娯楽

 

失敗した時のリスクマネージメントがとてもうまい

 

HIT ONでもそうだ

 

笑顔は本当に最強、相当な武器になるし

 

通常なら1つのミスでGAME OVERだが、それを取り返せるような会話で

 

マイナススタートからプラスへ持っていけることだってある

 

 

僕は彼らから大切なことを学んだ

 

人との対話なんだ、そう、人と人との

 

 

 

その後、街中へ行き、時間を潰した後、

 

この出張のクライマックスが待ち受けていた

 

 

僕、僕の母親、カレンが会うのだ

 

 

彼女を紹介するのは人生で初めてのイベント

 

 

偶然、僕も母親も彼女の地元にいるし、

 

カレンとの時間を作ることも出来る

 

偶然が重なった結果だった

 

 

 

 

よく女の勘は鋭いというが

 

母親はそれを証明する存在だった

 

僕が何も言わなくても、すぐに勘付いてしまう

 

 

10代の頃は、少し注文をつけられることもあった

 

その時は、正しいのか正しくないのかわからなかった

 

言いなりになることが正しい方向へ導かれることではないし

 

反抗することも正しい道に繋がるわけではない

 

 

 

例のごとく、

 

"あなたの今の彼女はどういう子なの?”

 

と聞いてきた

 

 

僕は自信を持って、

 

"今までで1番気が合う子"

 

と素直に答えた

 

そして、彼女がCAだとか、ハーフだとか

 

生い立ちやどのようにして出会ったかなど

 

事細かく説明した

 

それが、約半年前の話

 

 

 

 

そして今日に戻る

 

 

場所の設定には少々苦労した

 

カジュアルすぎるのはダメだし

 

かといって、きちんとしすぎるところを選ぶのなんだか気が引ける

 

結局場所が決まったのは3人が会う何日か前の話だった

 

アクセスも良いし、所謂いいとこ取りを選択

 

 

久しぶりに落ち着かないカレンを見た

 

僕の母親に気に入られなかったらどうしようとか

 

今日着る服が何が1番相応しいのか全然わからないとか

 

いつもは自信満々に物事を進めるのに

 

そのギャップが僕には何だか愛おしく見えてきた

 

"そんなに心配することないよ、本当に会うだけなんだから。何かあってもちゃんとフォローするよ"

 

"うん、とうとうこの時がきちゃったね(笑)"

 

 

 

 

 

タクシーから降りて、約束の場所に急ぎ足で向かった

 

少々、遅れそうだった

 

 

 

既に母親は座って待っていた

 

 

 

"母さん、お疲れ様"

 

ついに対面することとなった

 

 

母親は少しもそわそわすることなく、

 

そこにはいつもの母親の姿があった

 

 

僕の家族は、亭主関白のような昭和の時代は全く感じられない

 

どちらかというと、まさしく現代

 

母親の方が断然稼ぎがいいし、家族の重大イベントには母親の意見が最も左右される

 

どっしり構える姿はなかなか男勝りだ、

 

加えて、"体格も"なのだが

 

 

 

本当にカレンは緊張していたのだろうか?嘘だろう?

 

さっきまでの動揺はどこにいったんだ?

 

カレンはスムーズに会話にとけ込んできたのだ

 

 

 

時間が経つごとにカレンと母親の会話が増えていき

 

僕は目の前にある有りっ丈のご馳走を頬張るだけだった

 

本当に最初だけ、船を動かしただけで、

 

あとは、自動操縦

 

なんのフォローもいらなかった

 

母親にはカレンが英語が話せることがとても評価できたようで

 

更には、僕からの仕込みのおかげか

 

母親が話したい自慢話を引き出すのがとても上手かった

 

相槌のタイミングも完璧だった

 

話の途中なのに、

 

母親はカレンを実家に招待して見せたいものがあると言い出した

 

さすがに、僕はこの時ばかりはむせてしまった

 

このスピード感についていけてないのは誰でもない僕だったのだ

 

 

有意義な時間は過ぎ、僕は最後に準備していた言葉を言った

 

 

"母さん、そんなこんなでさ、あと2、3年後にカレンと結婚するよ"

 

 

 

それまで陽気だった母親が、一気に泣き出してしまった

 

そしてゆっくりうなづいた

 

"カレンちゃん、うちの息子をよろしくね”

 

 

 

母が涙もろいのは知っていたが、

 

まさかここで泣き出すとは思っていなかった

 

そして、僕の方も

 

熱いものがこみ上げてきた

 

必死にこらえていた

 

 

 

今まで母親にたくさん迷惑をかけてきた

 

思い返せば、家出未遂もあったし、

 

部活のスパイクは少し使えなくなったら短期ですぐに変えてもらった

 

思いっきりビンタされたこともあった

 

ただ、なんでビンタされたかは覚えていない。。

 

1番迷惑かけたのは大学の学費だ

 

私立、そして学部的に恐ろしいほど高い

 

超高級車が複数台買えるくらいの学費だ

 

それを自分の洋服等を我慢して

 

自分のために投資してくれたのだ

 

成功する(大学に合格する)保障なんてどこにもなかった

 

だけど、それを信じてくれていた

 

今の自分があるのも母親のおかげなのだ

 

 

 

たくさんのことが頭をよぎった

 

母親は将来的な形を喜んで受け止めてくれた

 

 

さすがのカレンも少し動揺したみたいだが

 

母親と別れたあと、

 

"親を泣かせちゃうぐらい、いいタイミングでかっこいいこと言っちゃうんだから”

 

と冗談交じりなことを言ってきた

 

 

 

 

この日もいつの間にか寝てしまっていた

 

 

 

 

 

早朝にカレンのキスで目覚める

 

カレンは仕事で先に部屋を出た

 

僕もその後、帰りの電車に合わせて支度を開始した